振り出し

□サイクリング オン ザ ワールドパッチベイ 017 2004.2.18

メルセデスベンツの日本代理店に決まった、キッコーマンに決まった、セコムに決まった、角川書店に決まったって。あいつら、いーなー。と同期のトモちゃんが言った。トモちゃんと言ってもトモヨシであり、2浪の同期生だ。これは1989年頃の大学新卒の就職口の話。私立人文科学系の極北、ここ哲学科の学生達にもそんな就職先がバンバン決まっていった。1989年というのはそういう時代だったのだ。当時就職協定という紳士協定は4年生の7月になるまで学生と会うことはまかりならんという建前になっていたが、実は水面下で5月や6月ごろから「業界セミナー」という形で青田買いは始まっていた。業界セミナーを1つの会社だけでやるんだから、世の中には常に裏というものがある。そういうことを知らないボンヤリした学生だった僕はと言えば、「え? 就職活動? あれって夏からやるもんじゃないの?」と呑気なことを言っては周囲の学生やら実家の母親を呆れさせていた。出版社に入るのが目標だった僕は、周囲の同期生達が熱に浮かされたように会社訪問をしまくっているのにつられてかけずりまわり、なんとか人並みに「内定」というものをもらった。システムエンジニアの会社2軒、ソフトウェア卸業社1軒。そう、大手の出版社なんぞはとっくの昔に「セミナー」で優秀な学生を確保して締め切っていたのだった。

結局、システムの会社は蹴って、大手ゲーム会社の出版部門の立ち上げにアルバイトで潜り込むことになった。そう、僕のキャリアの振り出しはフリーターだったのだ。

数回の転職を経て今はモバイルコンテンツ制作をやっているのだから、今思えばシステムエンジニアやってても同じだったかもな。

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