□「テレビっ子」の逆襲002

□「テレビっ子」の逆襲002

初めて自発的に見た番組はこんな感じだった。家に誰も居ないのでテレビの電源つまみを引っ張ってみたところ、何かダムの壁の上のようなところで2人の男が走ったり殴り合ったりしている。なんだこれは? と思っているとカメラが寄っていく。一方の男は頭がサボテン状で全身が緑色(に見えた。白黒テレビなので想像力が勝手に補完したのだ)でトゲトゲしている。一方の男はヘルメットに目がついたような状態でマフラーをしており、体のキレがサボテン男よりも良かったのだ。やがて目付きヘルメット男が殴り合いと蹴り合いにおいて勝利を収め、なんか番組も収まったのだったが。

今思えばおそらく仮面ライダーで、サボテン男の方はサボテグロンだろう。

まだ仮面ライダーの体側には線が無くて(というか、黒い線がついていた)、普通のオートバイに乗っていた。悪者らしい人々も地味で、背広にメガネ白髪のおじさんが手提げ金庫状のものを持って逃げているのを黒線ライダーが追いかける。しまいに背広メガネはピストルでライダーをバンバン撃つのだが、我らがライダーには全っ然、効かない。当然だ。彼は改造人間なのだからな(そんな説明も見たこと無かった)。

やがてライダーの体側には線が出たり、二本線になったり三本線になったりして、学校の水泳検定の級が上がっていくような感じで小学生になった僕はどんどんのめり込むことになるが、そのあたりは同年代の皆さんと同じようなことである。今でこそテツ&トモが出始めの頃に「ダサいもの」として着ていた横線ジャージは、ライダーを見て育った小学生の僕らには変身願望を満たすライダースーツだったというわけだ。